血液の病気は、初期には自覚症状が乏しいことが多く、気づかないうちに進行してしまうことがあります。
赤血球や白血球、血小板、そしてそれらを生み出す骨髄や血漿に異常が生じると、さまざまな血液疾患が発症します。
健康診断などで早期に発見することが、重症化を防ぐための重要なポイントになります。
●血液のしくみと病気の発症メカニズム
「血液の病気」と言われても、具体的な病名や症状をすぐに思い浮かべるのは難しいかもしれません。
血液は、血球(全体の約45%)と血漿(約55%)という2つの成分から成り立っています。
血球は、「赤血球」「白血球」「血小板」という3種類の細胞成分に分類され、骨髄内の造血幹細胞から生み出されます。
血漿は、血球を運ぶ液体成分で、水分のほかにタンパク質や電解質などさまざまな物質を含んでいま す。
血球や骨髄、血漿に異常が生じると、血液の病気へとつながっていきます。
●赤血球の病気--- 酸素を運ぶ働きに支障が出る
赤血球は、肺で取り込んだ酸素を全身に運び、二酸化炭素を肺へ戻す働きをしています。
代表的な異常には、赤血球が過剰に増える多血症と、基準値より少ない貧血があります。
多血症では血液が濃くなり、血栓ができやすくなるため、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まります。
顔面紅潮、目の充血、皮膚のかゆみ、頭痛、めまい、耳鳴りなどの症状がでることがあります。
貧血になると、身体に十分な酸素が届かなくなり、動悸や息切れ、立ちくらみ、倦怠感、皮膚の蕭班などの症状が現われます。
●白血球の病気--- 免疫力に関わる
白血球は、身体をウイルスや細菌などの外敵から守る免疫細胞で、免疫システム全体の調整役も担っています。
白血球が多すぎる状態は白血球増加症、少なすぎる場合は白血球減少症と呼ばれます
。 これらの異常は、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、アレルギー疾患、膠原病など、さまざまな病気と関連します。症状も多様で、早期の検査が必要になります。
●血小板の病気--- 出血しやすくなることも
血小板は、傷口をふさいで出血を止める「止血作用」を担う成分です。
しかし、増えすぎても減りすぎても問題が生じます。
血小板増加症では血栓症のリスクが高まり、血小板減少症では出血が止まりにくくなり、
あざができやすい、血尿や血便、歯ぐきや口のなかの出血といった症状が現 われることがあります。
●骨髄の異常による病気にも注意
血球をつくる骨髄に異常が起こると、赤血球・白血球・血小板すべてに影響が及びます。
代表的な骨髄の病気には以下のようなものがあります。
○骨髄異形成症候群(MDS)
血液細胞が正常に作られなくなる疾患。
○多発性骨髄腫
骨髄のなかで異常な形質細胞が増殖し、がん化する病気。
○急性骨髄性白血病(AML)
未熟な白血病細胞が急速に増殖する血液のがん。
●血漿交換療法
血漿は、血液が循環するために欠かせない、重要な成分です。
血漿にはさまざまな物質が含まれていますが、なかには病気の原因となる物質が存在していることもあります。
劇症肝炎や肝不全、自己免疫疾患、薬が効かない進行性の膠原病などでは、
「血漿交換療法」によって病気の原因物質を取り除く治療法が、検討されることがありま す。
●◆おわりに◆
血液の病気は初期には自覚感状が乏しいことが多く、気づかないまま進行し、重症化することがあります。
こうした事態を防ぐためには、定期的な血液検査が欠かせません。
健康診断の血液検査で異常を指摘されたときは、そのままにせず、医師の診察を受けることが大切です。
資料提供:メディカルライフ教育出版